ねぇきいてタイトル

■ 開発にあたって
近年、コミュニケーションエイドとして携帯電話や携帯ゲーム機が、多くの注目を集めています。
なかでも、携帯電話とPDAを融合させた携帯端末スマートフォンへの関心が高まっています。 こうした携帯端末は、メール機能やカメラ機能だけでなく、アプリケーション(以下アプリ)をインストールすることで様々な使い方ができ、カスタマイズも可能であることが大きな魅力の一つでしょう。
現在、こうしたスマートフォンや携帯ゲーム機を利用したコミュニケーションに障がいのある方を主な対象とするコミュニケーションエイドとしてのアプリが、既にいくつか発売されています。
価格は1500円から35000円程度と幅があり、それぞれに専用のシンボルや機能が多数用意されています。しかし、様々な機能が増えている反面、複雑すぎて使いづらく現場では十分に生かしきれていないというのが現状です。
そこで、私たち鳥研(愛知工業大学・鳥居研究室)は、言語障がいのある方がより簡単により気軽に伝える楽しさと伝わる喜びを味わえるような新しいアプリの開発に着手しました。
そうして開発されたこの「ねぇ、きいて。」は自閉症や言語障がいのある方のコミュニケーションを助ける、安価で使いやすいAAC(補助代替コミュニケーション)ソフトウェアです。本アプリをiPhoneやiPod、iPad、またはアンドロイドを搭載するスマートフォンにインストールするだけで、言語に頼らず、誰でも簡単に楽しくコミュニケーションをすることができます。

■ 目的
本アプリは、誰でも簡単に言語に頼らないコミュニケーションができることを重点として、開発されています。
自閉症の方や失語症の方などコミュニケーションに困難のある方、重度な知的障がいのある方の支援だけでなく、小さなお子さまの言語教育にも役立つ内容となっています。このアプリを通じ、多くの方が伝わる喜びを感じることでコミュニケーションへの意欲を高めることができればと願っています。

カメラ機能を搭載
トップ画面

■ より簡単に
自閉症やその他のコミュニケーション障がいのある方にコミュニケーションを自発するえるためように教の拡大/代替コミュニケーショントレーニング、PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)の開発者であるAndy B.&L.Frost B.,PhDは、「子ども達に対するコミュニ ケーション指導は、欲しいものをどのようにして要求するかを教えることから始める方が役立つ」と述べています。
伝えたい気持ちを強く持つのは何かを要求する場面であり、自らが発した要求が満たされることで伝わる喜びを実感することができるからです。

そこで、今回のアプリ開発では、「…したい」「…ほしい」といった基本的な要求を容易に伝えられることを念頭において制作に取り組みました。使用場面を「要求」に絞ることで、より的確にスピーディーに自分の意思を伝えることができます。
その結果、機能が最小限に押さえられ、より簡単な操作が可能になったのです。ワンタッチで要求が伝えられる簡便さは、他のコミュニケーションアプリには見られない利点です。

■ より楽しく
本アプリは、自閉症の方や失語症の方などコミュニケーションに困難のある方以外に、小さなお子さまの言語教育にも役立つ内容となっています。
子どもたちは、ジョークや音真似が大好きです。「タッチすると音が出る」という因果関係の学習にもなり、機器への関心を高めることができます。「お笑い」や「効果音」など、今までにないユニークなコンテンツを盛り込むことで、子どもの興味を自然に機器へと誘導することができ、興味を持ったところから、触ってみよう、使ってみようという意欲が湧く仕組みになっているのも本アプリの特徴の一つです。
さらに、こうしたカテゴリが周りの人とのコミュニケーションやかかわりのきっかけとなる可能性も高く、そこから他者とのつながりが深まることが期待できます。

■ よりわかりやすく
本アプリは、特別支援学校で実際に自閉症などコミュニケーションに障がいのある子ども達と接してきた教員の協力によって開発を進めました。
そのため、現場に立つ者にしか分からない多くの工夫を凝らしてあります。
例えば、カテゴリやシンボルを実生活に関係の深い内容のみに絞ることにより、障がいのある方でも容易に選択することができるようにしました。
また、日常会話の基礎となる二語文で構成されていますので、伝える側、受取手側双方にとってわかりやすい内容になっています。
すべてのイラストは幅広い年齢層に受け入れられるように、わかりやすく親しみやすいデザインを採用しています。明るくハッキリした色遣いにこだわり、アピール力と識別しやすさを実現しました。
その他、屋外や人の多い場所など聞き取りにくい環境でも明確に伝わるように、音量を最大限にまたクリアに加工してあります。


オリジナルアイコン width=

■ もっと自由に、広がる思い
「ねぇ、きいて。」には日常生活の様々なシーンに対応する約120個のアイコンがあらかじめ備わっていますが、使う人の状況によってはより多種のアイコンが必要な場合も考えられます。
ただ、アイコンの数ばかりを増やしても、実際に使用する機会がないものが多ければ、かえって選択に時間がかかり操作しづらくなる可能性があります。
そのような時に役立つのが、スマートフォン内蔵のカメラやマイクを利用したオリジナルアイコン作成機能を備えた「ふやす」ページです。 この「ふやす」ページでは、自分で撮った写真やネット上で見つけたイラスト、音声を使って、オリジナルアイコンを簡単に作ることができます。 例えば、お気に入りの場所や人物、毎日の決まった行動など、使用者の実生活に沿ったオリジナルアイコンがあれば、コミュニケーションの幅が大きく広がることは間違いありません。
このオリジナルアイコンを使って、簡単な操作性はそのまま、より素早く効果的に意思を伝え合うことができるでしょう。
バージョン3.0からは、カメラ機能を使って作成したアイコンや既存のシンボルを自由に配置して、オリジナルページをカスタマイズすることができます。

【オリジナルページのつくり方】

◦ オリジナルの組み合わせを6ページ、自由にカスタマイズできます

・トップページ下の「オリジナル」をタップ→「オリジナルページ」へ移動

・『オリジナルページ』の好きなページ(1~6)をタップしページ移動

・右上の「つくる」をタップして[新しいアイコンを作る]か[既存のシンボルを読み込む]を選択

◉ 新しいシンボルを作る

・青の「アイコンを選ぶボタン」をタップ →読み込み元を選ぶ
※読み込み元を、写真アルバム・カメラ・保存された写真から選択
※ピンチ(2本指で操作)で移動と拡大縮小して位置調整し「選択」

・赤いマイクボタンをタップして点滅中音声を録音(最大10秒間)
再度タップして停止します
※緑色のプレイボタンで確認ができます

・タイトルになる文字(全角8文字・半角16文字まで)を入力

・右上の「ほぞん」ボタンをタップ でアイコン完成!

・『オリジナルページ』のアイコンをタップして再生

・「つたえるページ」でアイコンをタップすると繰り返し音声が出ます

◉ 既存のシンボルを読み込む

・カテゴリの中から欲しいシンボルを選びタップする

『オリジナルページ』にアイコンが追加されます

◆ アイコンの削除…削除したいアイコンを長押し

削除してよいか?で「はい」を選択して削除できます


オリジナルアイコンの作り方

あなたから、そして私から

■ 2種類のモードから選べます
本アプリには、2種類のモードがあります。 [サポーターモード]は、障がいをお持ちの方をサポートする支援者(サポーター)から、コミュニケーションをスタートするためのモードです。
[使用者セルフモード]は、障がいのある方本人(使用者)が、自ら他者に要求を伝えるためのモードです。
 これら2つのモードを使う人の状態や使用時の状況に応じて使い分けることで、より効果的なコミュニケーションが期待できます。

【サポーターモード(支援者が使用者に提示する)】

  重度の知的障がいのある方にとっては、二者択一でも難しい場合があります。
  まして、多数の選択肢(伝えたい内容)の中から自分が必要とするものを見分けて選ぶこと
  は、大きな困難を伴います。
  この[サポーターモード]では、あらかじめ支援者(サポーター)が使用者(障がいのある方)
  の実態と状況に合ったシンボルをいくつかピックアップして相手に提示するところからコミ
  ュニケーションをスタートさせます。
  ・使用者は、サポーターから提示されたシンボルの中から自らの要求に合った内容を選ぶこ
   とができます。
  ・使用者が要求に合うシンボルにタッチすると、二語文(シンボル名と述語)の音声が発せ
   られます。
  ・ピックアップするシンボルの数を1から4個に限定することで選択しやすくなっています。

<例:使用者が、「何かを食べたい」状況の場合>

サポーターが12個のカテゴリの中から「たべたい」を選択。

シンボルの中から、使用者が食べたいであろうものを予測して
「ごはん」「パン」「味噌汁」「ラーメン」を選択し、使用者に提示。

サポーターによって選ばれたシンボルの中から
使用者が「ごはん」を選択し、画面にタッチ。

「ごはん、たべたい」という二語文が音声として発せられる。

Kiite


【使用者セルフモード】

  使用者が操作方法を学習したら、[セルフモード]で使用者本人がカテゴリやシンボルを使って
  直接要求を伝えられます。
  気持ちを伝えようとすることでコミュニケーションの楽しさを味わい、さらなる意思疎通に発
  展していくことでしょう。
  ・このモードでは、障害のある方でも簡単に操作できるよう、反応する部分を広く取るなど随
   所に工夫を凝らしました。

<例:使用者が「ごはんを食べたい」という意志を伝える場合>

使用者が12個のカテゴリの中から「たべたい」を選択。

実際に食べたいもののシンボル=「ごはん」にタッチ。

「ごはん、たべたい」という二語文が音声として発せられる。

Kiite


【カテゴリ・シンボル一覧】
【たべたい】:ごはん/パン/みそ汁/デザート/お弁当/ラーメン/アイスクリーム/
       スナック菓子/チョコレート/
【のみたい】: 水/ お茶/ 牛乳/ ジュース(コップ)/ コーラ/ コーヒー/
       ジュース(ペットボトル)/ シェイク/ サイダー/
【ほしい】: ペン/ 消しゴム/ はさみ/ セロハンテープ/ 紙/ クレヨン/ ティッシュ/
       ばんそうこう/ ゲーム機/
【いきたい】: おうち/学校/ トイレ/公園/ コンビニ/ スーパー/ ファーストフード店/
       プール/病院/ 教室 /保健室/ 図書室/音楽室/ 体育館/運動場/
【やって】: おんぶ/ ぐるぐる/ こちょこちょ/ おいかけっこ/ 歌/ ダンス/ ボール遊び/
       ハグ/ かたぐるま/
【みたい】: TV/ DVD/ 映画/ えほん/ 新聞/ マンガ/ 踏切/ 換気扇/ 信号/
【ほけん】: 熱がある/ 頭が痛い/ おなかが痛い/ 歯が痛い/ 耳が痛い/ 気持ちが悪い/
       つめ切り/ かまれた!/ ころんだ/
【あいさつ】: おはようございます/ こんにちは/ おやすみなさい/ いただきます/
       ごめんなさい/ ありがとう/ さようなら/ できました/ 手伝って/
【人】: おまわりさん/ お医者さん/ 赤ちゃん/ おとうさん/ おかあさん/ おじいさん/
     おばあさん/ 先生/ 友達/
【お笑い】: なんでやねん/ しぇー/ 笑い声/ ドラムロール/ ファンファーレ/ 拍手/
       ピンポーン/ ブブー/ ほぁほぁほぁ〜ん/
【おへんじ】: はい/ いいえ/ どちらでもいいです/ わからない/ 考え中/ 待って/
       やめて!!/ わかりました/ びっくり!/
【きもち】: すき/ きらい/ うれしい/ 悲しい/ 怒っている/ こわい/ おなかがすいた/
       のどがかわいた/ やすみたい/



powwow

■ Powwow Talk!("Let's Talk! 日本版")
言葉に頼らないコミュニケーションツールを必要とするのは、言語障がいのある方だけではありません。例えば海外旅行に出掛けたとき、現地の人とコミュニケーションができず困った経験は、多くの方がされていることでしょう。
そんなときに、自分の意志を簡単に相手に伝えることができる英語版のコミュニケーションツールがあれば、世界はもっと広がるはずです。そこで私たちは「ねぇ、きいて。」のノウハウを生かし、英語バージョン"Powwow Talk!"を開発しました。

Kiite
Kiite